トップページ | ぶりっこおばさん・・・その2 »

2007年8月23日 (木)

ぶりっこおばさん・・その1にほんブログ村 小説ブログへ

「ぶりっこおばさん」

 幾つになってもぶりっこしている女のお話です。

 登場人物・・・純子(小学校教師)

        隆司・・・純子の夫(高校教師)

        ヨウコ(純子の友達)

 

 夕食の後片付けが終わって、ちょっと一息いれようと

純子はテレビの前のソファに座った。夫の隆司はリビン

グの椅子に坐って新聞を読んでいた。

「なんだかね、生徒たち、ちっとも私の言うこと聞いて

くれないのよ」

 純子は夫の隆司に向かって話しかけた。隆司の答えを

しばらく待ったが、返事はなかった。純子は隆司の反応

の無さにそれ以上、話を続けるかどうか迷ったが、今

はどうしても話を聞いてもらいたい気分だった。

「授業中、ウロウロ歩き回る子もいるし、女の子はおし

ゃべりを平気でするし、いくら注意してもだめで、全然

授業にならないのよ。どうしたらいいのかしら」

 隆司は聞こえているのか聞こえていないのか相変わら

ず返事はない。 純子は話し出したことを後悔したが、

こうなったら意地でも隆司の口をひらかせたかった。

「ねえ、どうしたらいいと思う?」

 隆司はうるさそうに新聞をたたみながら言った。

「そんなこと最初から無理だってわかっていただろう」

「無理ってどういうこと」

「おまえじゃあ四年の担任は勤まらないってことさ」

「どういう意味よ」

「おまえには四年生をまとめていくだけの力はないって

ことだよ。最初にやめとけって言ったじゃあないか。い

つも都合のいいように解釈するから、忠告しても無駄

と思ったけどな」

  そういうと隆司は二階に行ってしまった。

 

 純子は今年からノイローゼで休職になった先生の後釜

で四年の担任になった。つも一年か二年の担任だった

ので自分でも不安はあったが、たまには他の学年を

て見たいという思いもあった。経験年数的にはベテラン

の域に入るが、管理職ら頼りないと判断されるらしく

というのは隆司が言っていることだが、ほとん一、

学年以外やったことはなかった。

友人のヨウコは新学期になるといつもあざ笑うように

聞いてきた。

「あら、また一年生なの。純子さんは低学年向きだもの

ね」

「違うのよ。私の希望なの。家庭があるしね。一、二年

のほうが少しは楽なのよ。れに低学年はまだかわいい

のよ。言うことを聞いてくれるしね」

「そうかしら。E子さんは三人子どもがいても高学年い

つも持たせられてるわよ。本人はたまに低学年に行きた

いって言ってるけど」

「学校によって違うのよ」

 高学年を任せられない先生と言われているようで純子

はヨウコにムッとした。雰囲気がかわいいから、頼りな

くみえているだけなのにと純子は内心思っていた。隆

は口元を皮肉にゆがめて言った。

「おまえのがきっぽさと無神経な所がわかるんだよ。 

年生になれば、この先生はどんな人か、信頼できるか、

見極めることができるさ。おまえは無理なんだよ。ばか

にされているんだよ」

 純子は頭にきて言い返した。 

「何、その言い方。ひどいわ」

 隆司はふんと純子を冷たく一瞥すると二階に上がって

った。

(がきっぽいなんて失礼ね。確かにしわもあるけど年よ

りずっと若くみえるし、充分かわいいわよ。無神経だな

んて、外ではすごく気を使っているのに)

純子には自分の鏡に映る姿はいつまでも大学生の頃の

かわいい姿に見えるのだった。自分ではもうすぐ五十

歳になるなんて信じられなかった。

(だいじょうぶよ。どうにかなるわよ。だって私、かわ

いいもの)

 純子は鏡の自分に向かってにっこりとした。 

しかし、案の定、純子の四年生担当はうまくいかなか

った。授業にならない日が続いていた。不安がイライ

ラの気持ちを増長させていった。純子がイライラして

いると生徒のざわつきがひどくなる。悪循環だった。

純子自身、四年生相手に自分の指導力に不安はあった

が、こんなにうまくいかないなんてと次第に惨めな気

持ちになっていた。夫は話も聞いてくれないでバカに

するだけだった。ここ数年、夫とは仕事のことはもち

ろん、ほとんど話らしい話はしていない。話はしな

てもお互いのやっている事は大体わかっているつもり

だった。でも、四年生の担任になって今までになく困

ったことにぶつかって愚痴ったり、意見を求めよう

すると隆司は冷たい敵意に満ちた目で自分をみるだけ

だった。

 これまでは自分たち夫婦は他と比べたら安定している

と思っていた。隆司は純子にとって害のない人だった。

どちらかというと便利な人だった。教師を続けられたの

も夫のおかげだと思っていた。夫は自分を大事に思って

くれている。愛されていると思っていた。でも最近の夫

の態度・・・これが倦怠期ということだろうか。

 それもあのワンベルで切れる電話のせいだろうか。

あのワンベルで切れる電話が何か意味があるのだろう

か。

 最初は間違い電話だと思って気にもとめなかった。

だが、三度、四度と続いた時、何か意味があるのではな

いかと思うようになっていった。最初は自分への嫌がら

せだうかと思った。通路にはみ出したベニカナメモチ

を通かかったおばさんが大声で邪魔ね、何て非常識な

のといながら通り過ぎていった。あの人だろうか。そ

れと同じ学年を担当しているA先生だろうか。自分と

は気あわないらしく何かにつけてとげとげしく絡んで

くる。三十代初めで自分の主張を譲らない。みえみえに

ばかしたような態度をとる。自分が若いときは年上の

先生を充分、尊重したのに今の若い子はそんなことは毛

頭思わないらしい。マア、あの女は若くはないけど。そ

れに独身だし。自分の方が気を使って、たててあげてい

るのに何でも好き勝手に決めてしまう。の人だったら

自分のほうがいやがらせの電話をかけたいぐらいだ。

純子はすぐに思いついた二人をあれこれ考えていた。

も、夫が冷たい目で見るようになったのはワンベル

がなり出した頃のような気がする。やっぱり夫に関

したことではないのだろうか。まさか、夫が浮気、そ

んなはずはないわよね。浮気相手がそれとなく自分の

存在を伝えようとしているのだろうか。それとも何

の合図なのだろうか。いや、合図なら鳴ったかどうか

わからないかのようにワンベルでは切らないだろう。

気の小さい人なのか一回でどきどきして切ってしま

か。でもね、夫は浮気なんかお金のかかりそうなこ

とはしないわ。そうよ。あの人ケチだもの、無駄なこ

とにはお金を使わないわよ。

 

 純子はそう思ったが、最近、隆司が洋服を自分で買っ

ていることも疑う要因だった。けっこういいものを買っ

てきた。今までは洗ってあればいいという感じに無頓

着だった。でも、まさかね・・・こんなにかわいい私を

裏切ることはしないわと子はそれ以上考えようとはし

なかった。

 

|

トップページ | ぶりっこおばさん・・・その2 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/451996/7632370

この記事へのトラックバック一覧です: ぶりっこおばさん・・その1にほんブログ村 小説ブログへ:

トップページ | ぶりっこおばさん・・・その2 »